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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)5308号 判決

原告

株式会社書泉

右代表者代表取締役

酒井正敏

右訴訟代理人弁護士

笠原喜四郎

被告

書泉労働組合

右代表者執行委員長

野中保夫

被告

関口武男

太田道子

内藤明子

原雄次

大薮平太

中村優

秋山勝

右被告ら訴訟代理人弁護士

倉田哲治

芳永克彦

内藤隆

石田省三郎

主文

一  被告らは、各自、原告に対し、九七七一万一〇〇〇円及びこれに対する、被告書泉労働組合及び同関口については昭和五四年七月一四日から、被告太田については同年六月一六日から、被告内藤については同月一九日から、被告原については同月二〇日から、被告大薮については同月一七日から、被告中村については同月二七日から、被告秋山については同月二一日から、それぞれ支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

主文第一、二項と同旨及び仮執行の宣言

第二事案の概要

一原告は、書籍、雑誌の販売を業とし、昭和二五年九月二日設立された株式会社で、肩書住所地に書泉グランデ(以下「グランデ店」という。)、千代田区神田神保町〈番地略〉に書泉ブックマート(以下「ブックマート店」という。)の両店舗を有し、昭和五三年四月ころの従業員数は一〇〇名余りであった。

被告組合は、昭和五一年一一月二〇日に原告の正社員及びパートタイマーをもって結成された労働組合であり、被告関口、同太田、同内藤及び同原は、いずれも被告組合の組合員であり、同関口は被告組合結成時に執行委員長に、同太田及び同内藤は同五二年一〇月副委員長に、同原は同月書記長に就任し、いずれも後記本件ピケスト当時その地位にあったものである。また、被告大薮、同中村及び同秋山は、被告組合を支援していた者である。

二被告組合は、賃上げ等の昭和五三年春闘要求の実現を目指して、同年四月から翌五四年四月にかけてストライキを実施したが、右ストライキに際しては、グランデ店前及びブックマート店前においてピケッティングを行った(以下、右ピケッティングを伴った本件ストライキを「本件ピケスト」という。)。

三原告は、次のとおり主張して、被告に対して損害の賠償を求める。

本件ピケストは、後記主張のような態様で行われたものであるから、違法であり、これを行った被告組合は民法四四条一項に基づき、同組合の役員であり、本件ピケストに加わった被告関口、同太田、同内藤及び同原、並びに本件ピケストを支援し、これに加わった被告大薮、同中村及び同秋山は同法七一九条に基づき、それぞれ原告に生じた損害を賠償する責任がある。

原告は、本件ピケストにより書籍の販売を妨害され、損害を被ったが、そのうち本件ピケストの頻度の高かった昭和五三年一一月から同五四年二月までの間に少なくとも九七七一万一〇〇〇円の損害を被った。

よって、原告は、被告らに対し、右損害金とこれに対する各被告に対する訴状送達の日の翌日から支払ずみまでの遅延損害金の支払を求める。

四被告はこれに対して、後記争点に関する主張記載のとおり主張して、損害賠償義務の存在を争っている。

第三争点及びこれに関する当事者の主張

本件における主要な争点は、

①  本件訴えが不当労働行為の実現を目的とする違法なものであり、訴権の濫用に該当するとして却下されるべき否か(本案前の主張)

②  本件ピケストが不法行為としての違法性を有するか否か

③  組合員個人及び支援労働者は被告組合と別個に不法行為責任を負うか否か

④  原告の損害の有無・範囲

⑤  原告に過失相殺されるべき事由があるか否か

である。

これらの各争点についての原被告双方の主張は、次のとおりである。

一本案前の主張―訴権の濫用について

(被告ら)

次に延べる事情によれば、本件訴訟は不法行為に基づく損害賠償請求に籍口して、訴えの提起そのものによって被告組合及び組合員に精神的、物質的負担を与えるという不当労働行為を実現することを目的として提起された違法なものであるから、訴権の濫用であり、訴えの利益を欠く。

1 訴訟提起の時期からみた本件訴訟の不当労働行為性

次に延べるとおり、原告は、昭和五三年三月以降被告組合に対する不当労働行為を段階的に強化し、悪質さの度合いを深めていったが、本件訴訟は、被告組合を解体、消滅させるという原告の意思が最も露骨かつ激烈に発現した時期である同五四年四月ないし六月に原告の被告組合解体のための一方策として準備されたものである。

(一) 昭和五三年春闘以降の団体交渉拒否

原告は、昭和五三年春闘要求以降翌五四年二月二七日までの間、不誠実な団体交渉すなわち実質的団交拒否に終始することによって、争議の長期化する被告組合の人的、財政的消耗を意図していた。すなわち、原告は、被告組合の同年春闘要求、夏闘要求及び年末要求について、被告組合と話合いによる解決をめざすのではなく、全書泉労働組合(原告の従業員によって被告組合とは別に結成されたもう一つの労働組合)との妥結内容を被告組合にも強要して、被告組合の存在意義をなくさせる等して被告組合の弱体化を策した。特にパートタイマーの労働条件に関する要求については、パートタイマーを組織化の対象とせず、一人のパートタイマーの組合員もいない全書泉労働組合との間で交渉、妥結し、その結果のみを被告組合に押しつけることにより、多数のパート組合員を有し、その労働条件決定に直接的利害関係を有する被告組合の団体交渉権を侵害した。

また原告は、同五三年春闘以降の被告組合との団体交渉においては「組合の要求は過大である」と繰り返すのみで、資料の開示や具体的事実を明らかにすることによって被告組合を説得するという対応をせず、被告組合の再三の要求にもかかわらず決定権限を有する社長を団体交渉に出席させず、決定権限を持たない人事部長らが漫然と全書泉との妥結内容を繰り返すのみで、原告自ら争議の長期化と泥沼化を招来するに至った。

(二) 同五四年二月二七日以降の右翼暴力団の導入と被告組合破壊行為

原告は、同五四年に入り、話合いによる争議の解決を放棄し、実力で被告組合のストライキを解除して職場から排除することを決断し、右翼暴力団約五〇名を「臨時従業員」の名目で導入した。右臨時従業員と称する右翼暴力団らは、同年二月二七日被告組合がストライキ中のグランデ店内に乱入し、被告組合員らを実力でグランデ店外に排除してストライキを暴力的に排除し、同日以降これに抗議するためグランデ店に赴いた被告組合員やブックマート店でストライキ中の被告組合員らに襲いかかり、暴行を加えて傷害を負わせたのみならず、被告組合員の自宅の玄関ドアに「死刑」、「センメツ」等の落書きをしたり、支援労働者の勤務先に押し掛けて大声を上げる等の嫌がらせを行った。そして、同年四月一三日右右翼暴力団らはブックマート店からも被告組合員を排除して同店でのストライキも解除し、これによって被告組合は職場から完全に排除された。

(三) 同五四年四月一三日以降の退職強要

原告は、被告組合を職場から事実上排除したものの、被告組合の活動力が低下せず被告組合を脱退する者もいなかったため、被告組合が職場に復帰してくることを恐れ、右翼暴力団を職場に常駐させる一方、個々の被告組合員を退職させることによって組合を解体、消滅させることを意図するようになった。そして、同五四年四月三〇日ころ被告組合員全員の親及び身元保証人あてに「組合員、身元保証人に対し組合の違法争議によって被った損害の賠償請求手続をとる」旨の通知を発送し、同年五月二日ころから被告組合員の親や身元保証人に電話をかけ、「今会社をやめれば損害賠償は請求しないし退職金も支払う」、「会社をやめるのであれば、こんな大げさにことはしない」、「組合の人数はどんどん減っている。支援労働者は成田の過激派である」、「組合の結束力が強く組織として話にならないので、本人と保証人と会社で話したい」等露骨に退職を強要した。さらに、同月下旬ころからは電話に出た組合員本人、家族に対し「神田でのことは子供の遊びだ。これからは神田からどこに火の粉がとぶかわからない」、「お嬢さんが我々のことをヤクザと言っている。これからは会社としてではないから覚悟しろ」、「こういう電話は脅迫電話になるが、訴えても火事場の遊びだ。身がかわいいなら説得しろ」等と述べて威迫、脅迫を行うようになった。このような原告の脅迫、嫌がらせ行為のためとりわけ被告組合員の家族の動揺は激しく、同月二四日被告組合員一名が意に反して原告から退職を余儀なくされた。原告は、それまで被告組合の争議行為を違法と主張したことはなく、遅滞なく身元保証人に対し責任を生ずべき事由が生じた旨の通知義務(身元保証人ニ関スル法律三条)を履行したことがなかったにもかかわらず、右損害賠償請求通知を五年間の責任期間(同法六条)を過ぎた者を含めて全組合員の身元保証人に対して行った。

このような経過を経て、原告は、同年六月四日に本件訴訟を提起した。

なお、被告組合らは、同五四年二月二七日以降の右不法行為につき、原告に損害賠償を求める訴えを提起したところ、東京地方裁判所はこれを認容する判決をし、同判決は控訴審で確定している。また、東京都地方労働委員会は、原告の右一連の労務政策について救済命令を発したが、原告はこれに対し不服を申し立てなかった。

(四) 被告組合員の全員解雇

その後、被告組合は、予め原告に通告したうえ、同五五年一一月二五日をもってストライキを解除し、翌日から就労しようとしたが、原告は社屋に被告組合員らの就労を拒否する旨掲示すると共に、社屋入口付近に臨時従業員多数を配置して被告らの立入りを阻止したため、被告らは就労することができなかった。さらに被告組合は、同六〇年以降原告と団体交渉を重ね、被告らの就労に必要な条件をすべて明示すると共に、争議の発端となった同五三年春夏闘における係争項目については原告が被告組合員の就労を受け入れることを条件として、原告側最終回答をもって妥結する用意があり、この場合右係争項目をめぐって被告組合が今後争議行為を実施することはあり得ない旨を通告し、原告に対し同六一年四月一日までに被告組合員らの就労を受け入れるよう申し入れ、同年四月一日以降グランデ店において就労の申入れを行ったが、原告は右就労要求を一貫して拒否し続けた。そして、原告は、右紛争の発端から実に約一〇年を経過した同六二年八月に至り被告組合員全員を解雇した。

2 請求態様からみた本件訴訟の不当労働行為性

被告組合は、組合員の賃金から徴収する一定率(社員は一パーセント、パートは二パーセント)の組合費を財政基盤としているところ、本件争議直前の被告組合員の平均賃金は社員一四万七〇〇〇円、パート六万四〇〇〇円にすぎず、その財政基盤は零細であったうえ、本件争議当時、昭和五一年一一月から同五二年九月までのいわゆる第一次争議終息後六か月しか経過しておらず、他の支援組合から借金もしており、およそ闘争資金と呼びうるものはなかった。かかる状態のままで被告組合は本件争議に入ることを余儀なくされ、同五三年一一月二二日の無期限ストライキ以降被告組合の組合費徴収は不可能となったため、被告組合の財政状態は悪化する一方で改善の条件はない。被告組合員らの賃金も、同五三年一一月は賃金カットのため僅少であり、同年一二月以降は支給されていない。原告は、被告らのこのような資力を知りながら、あえて過大な請求金額を掲げて本件訴訟を提起している。

債務者に支払の意思も能力もなく、債権者がこれを認識している場合であっても、金員の支払という本来の目的と異なり、債務名義を取得したうえで強制執行不能として経理上の損金処理をしたり、確定判決による時効の中断と延長を意図する等の正当な動機に基づきあえて訴求する場合があり得るが、右のような正当な動機に基づかずに訴求することは、債務者にとって制裁、報復としての意味しか有さず、民事訴訟制度の目的とかけ離れたものになる。本件訴訟は、まさに被告らに対する制裁を唯一の目的としたものであり、被告組合を消滅させようという動機に基づき提起されたものである。

3 訴訟物の不特定及び請求原因の抽象性と本件訴訟の不当労働行為性

原告の本訴請求は、不法行為者の特定、行為の日時、場所、態様、共同不法行為者相互間の関与の形態等の主張が極めて抽象的であり、総体として訴訟物の特定がされておらず、被告らに応訴に伴う負担を一方的に課する不当なものである。原告が被告組合以外に被告組合員ら七名個人をあえて被告とし、不特定、不明確な主張でその責任を追求しているのは、原告の本訴請求が損害の填補を意図しているのではなく、巨額の請求による被告組合員らの動揺を通じて被告組合の活動を鈍化させようという団結権の侵害を意図しているものと推認せざるをえない。

(原告)

1 被告らは、原告が被告組合との話合いによる解決を放棄し、右翼暴力団の暴力を利用してピケストを排除したと主張するが、被告らの違法なピケストは原告の店内書籍販売を不能にした多数行為者の暴力的店舗占拠であり、原告が団体交渉の席上において何回となくその中止を懇願したにもかかわらず、被告組合がこれを受け容れずにいたことは明白である。会社の最終案は可能な限り譲歩した最大限の回答であったから、たやすく変更することは不可能であり、かつ、提示金額は他の同種企業と比べても、また当時の水準を客観的に評価しても相当以上の位置にあったものである。にもかかわらず被告組合は、会社管理職に対し暴力的な態度で長時間にわたり全員団交と称し組合運動に練達した支援者の力を借りて威圧的団体交渉を多数回にわたって続け、会社側を多衆の威力により屈伏させようと図ったもので、不誠実な団体交渉を行ったのはむしろ被告組合であるというべきである。これに対し会社が相当な処置をとっても不当労働行為ということはできず、被告らは自ら計画した争議の長期化を会社側に転嫁しようとしているものである。また、原告がピケストを排除した後も警備員を配置したのは、被告組合が顧客に対する会社への不買や店舗奪還を叫び連日多数の支援者と共に定時にまたは抜き打ち的に来襲し、ときに二〇〇名という支援者を動員し宣伝カーまで繰り出して会社の営業を妨害するので、多衆による店内突入や営業の妨害を排除する必要があったからである。

また、被告組合員の全員解雇の事実も本訴の請求原因事実から相当期間経過後に発生したもので、本件訴訟とは無関係である。

2 被告組合が行った争議行為は、店内書籍販売を唯一の営業目的とする会社に対し、顧客の入店を阻止するため時には多衆の力で顧客に罵声を浴びせながら取り囲みこれを店外に押し出すこともあれば、あえてこれをしなくとも店頭一面にビラを貼り巡らせ多衆の組合員、支援者が入口にたむろし、通常の顧客が一見しただけで入店購買を中止するのが当然な状態を作出したものである。かような違法行為を続け会社に損害を与えておきながら、これに対する損害賠償請求訴訟を提起したことにつき、その手続を巡り不当労働行為をいうことは不合理極まりない。

3 被告らは、本訴請求につき訴訟物の不特定、抽象性をいい、各行為者の行為の特定をしなければならないというが、本訴請求の原因である共同不法行為が成立するためには会社に対する店舗占拠による営業妨害行為が被告らの客観的共同行為によって行われれば足りるものであり、この意味において訴訟物の不特定、抽象性はない。共同不法行為は、被告らが共同して原告の営業を妨害することによって損害を与えれば足りるのであって、いつ誰がどのような行為をしたのか具体的行動にまで立ち入って明らかにする必要はない。

また、被告は被告組合員ら個人七名を被告としたことは団結権の侵害であるというが、被告組合の他に各個人に対しても不法行為責任を問うことができることは後記のとおりである。

二本件ピケッティングの違法性

(原告)

被告組合のピケッティングは、被告組合の組合員でない原告社員の入店や就労阻止ではなく、顧客に対する入店及び購買を阻止する違法なものである。すなわち、被告組合の組合員及び支援者は、開店時にグランデ及びブックマートの両店舗の前面ガラス一面にビラを貼り、顧客入口にグランデ店では三、四名、ブックマート店では四、五名で立ったり座り込んだりして、閉店時まで顧客の入店を阻止した。また、ハンドマイクで顧客に不買を呼びかけたり会社を誹謗する行為を情宣活動と称して定時又は不定時に行い、店内に入ろうとする客に対しては、スト中だから入るな、本屋はここだけじゃない、よそに行って買え、などと言って入店を拒んでいた。このため、書店街に来た顧客は会社を敬遠して全く入店しなかった。それでも、強硬に店内に入り本を購入しようとした二、三名の客に対しては、被告組合の組合員がこれを取り囲み、暴力で店外に排除する行為を行った。このようにして会社の店内書籍販売は皆無に等しい状態が続いた。このような無謀な座り込み戦術は違法な争議行為であって許されるものではなく、また平和的説得というピケッティング本来の姿を逸脱した不法行為である。

(被告ら)

1 目的の正当性

本件争議は、昭和五三年春闘、夏期一時金、年末一時金という賃金をめぐり労働条件の向上を求めると共に、原告の実質的団体交渉拒否等の不当労働行為の中止を求めて行われたもので、動機、目的において全く正当なものである。

2 手続、態様の正当性

被告組合は、争議権行使の際には必ず事前に約一週間の余裕をもって通告を行っており、右通告期間内にも原告と交渉を継続し、特にストライキ前日には必ず団体交渉を開催して原告の意向を打診し柔軟に戦術を行使してきた。

本件ピケストの態様は、店舗出入り口に数名の被告組合員が立ち、マイクやビラで顧客や通行人に協力を呼びかけるものであり、平和的な説得ピケの範囲を逸脱したことはなかった。すなわち、出入口の封鎖、実力をもっての他の従業員の就労を阻止するなどといった事態は一度もなく、その結果顧客が被告組合の説得に応ずることなく入店して書籍を購入したり、説得に耳を傾けて入店をためらう顧客に対し原告の職制が路上に出向いて注文を聞き、店内から注文の書籍を持参することもあった。

原告は、被告組合の争議権行使に対しこれを回避するための努力を全く行わず漫然とこれを放置しており、このことは原告が被告組合のストライキによる損害を何ら負担と感じておらず、ストライキが正当であることを十分認識していたことを示すものである。

三被告らの不法行為責任

(原告)

1 被告組合の責任

労働組合法一二条が法人である労働組合に民法四四条を準用し、その機関の行為につき組合の不法行為責任を認めているのは、組合という社団的機能及び組織に由来するものであり、この理論は権利能力なき社団である被告組合にも妥当する。したがって、被告組合は、その機関である被告関口(執行委員長)、同太田(副委員長)、同内藤(副委員長)及び同原(書記長)らが不法行為をした場合には、労働組合法一二条及び民法四四条一項の類推適用により不法行為責任を負うべきである。

2 被告組合員の責任

本件の被告となっている組合員四名の組合役員としての行動は、一面社団である組合の行為性を持つと共に、個人の行為である側面を有することを否定することができない。したがって、本件ピケストを直接指導、統制する地位にあった同人らは、被告組合とは別に、これと並んで不法行為責任を負うものと解すべきである。

3 支援労働者の責任

被告組合の組合員らは必ずしも労働運動に練達した者とみることができないのに対し、被告秋山、同中村及び同大薮は、いずれも労働組合運動の経験を積んだ者であり、多数回にわたり原告との団体交渉の席につき、争議の実行については被告組合員と合同一体的な行為に出ていたものであり、その間に行われた時限あるいは全日のピケストの状況を知悉していたことは明らかである。さらに、被告秋山、同中村及び同大薮は、無期限のピケストに入る前日の昼間に一時間にわたり約二〇〇名の支援者を集めて社前集会を行い、ブックマート店まで行進して気勢をあげ、同夜開催された第七〇回団体交渉に出席して無期限ストに入ることを通告し、その後長期にわたる無期限のピケスト期間中もほとんど毎日のように店舗前に来て被告組合員及び他の支援者に同調して違法ピケストに加わり、右ストライキ中に開催された第七一回以降の団体交渉にも出席し、原告側から絶えず無期限のピケストをやめてほしい旨の懇願を受けながら、これを一顧だにせず他の支援者と共に違法ストを行ったものであるから、仮に座り込み等の直接行動にでなくとも当該組合員及び支援者と共同して違法争議に加功していたものと見ることができ、共同不法行為者又は幇助者としての責任を負うべきである。

(被告ら)

1 被告組合員の責任の不成立

争議行為は、個々の組合員の争議参加行為の単純な集積ではなく、計画的に組織化された集団的団体行動であるという点に意味がある。このように争議行為を団体行動として把握するときは、一個の団体行動として争議行為のみが法的評価の対象となり、争議行為を構成し、あるいはこれに参加した個々の組合員の行為は法的評価の対象とならない。したがって、違法争議を理由としてその責任を追求する場合も、当該違法争議行為の主体である労働組合のみが対象となり、個々の組合員は対象とはなり得ないと解すべきである。

加えて原告は被告組合員の個人責任につき、本件ピケストの企画、決定、実行の各過程と右被告らとの関係、関与の態様について何ら具体的な主張、立証をしていない。

2 支援労働者の責任の不成立

企業の労使関係上の責任問題を当該企業外の第三者である支援労働者に転嫁することは法律上およそ不可能である。原告は、支援労働者である被告秋山、同中村及び同大薮の不法行為責任の根拠として、①多数回にわたり団体交渉に参加していたこと、②ピケストにも加わっていたことをあげるが、①については団体交渉に参加することが何故に違法とされるのか全く理解し得ず、②については当該参加行為の日時、態様が具体的に全く明らかにされていない。

四原告の損害

(原告)

原告は、被告の違法なピケストにより、売上が大幅に減少し、昭和五三年一一月から同五四年二月までの間に合計九七七一万一〇〇〇円の損失を計上したが、この損失の発生は、右ピケストによる売上減が原因であり、右期間中に少なくとも右同額の損害を被った。

(被告ら)

原告が本件で請求する損害は、本訴請求期間中の予想売上高から売上原価及び売上経費を控除した後のいわゆる赤字金額を中心とするものであるが、右赤字金額中、非組合員(スト不参加)の人件費その他の販売費及び一般管理費は、ストの有無にかかわらず原告において支出すべき金額であるからこれを損害として被告らに負担を強いる根拠がない。

五過失相殺

(被告ら)

仮に被告らに何らかの損害賠償責任が認められたとしても、これはすべて次に述べるような原告の被告組合を敵視した争議行為への対抗行為に起因するものであるから、これらの事実を公平の理念及び信義則に基づき過失相殺の適用上考慮すべきである。そして、原告の行為の意図、態様、程度、これによって被告組合が受けた精神的、物質的損害を考えれば、原告の請求金額全額が過失相殺されるべきである。

1 争議誘発の責任

原告は被告組合が結成されるや、直ちに第二組合である書泉社員会(現全書泉労働組合)を結成させることによって第一次争議(昭和五一年一一月から同五二年九月まで)を発生させ、同争議が解決した翌年の昭和五三年春闘においても前記一1(一)記載のとおり全書泉労働組合を優遇して本件争議の発端を自ら創り出した。すなわち、本件争議は被告組合の意思によってではなく、原告の頑なな被告組合敵視の労務政策に唯一の原因がある。

2 争議拡大の責任

同五三年春闘に端を発する本件争議が長期化したにもかかわらず、その解決能力を有する原告の社長は、一度も被告組合との団体交渉に出席しないのみならず会社にも出社せず、漫然と紛争の長期化、複雑化をもたらした。そして、原告は、本件無期限ストが予告されても、前記一1(一)記載のとおりこれを回避するための努力を一切行わずに事態を放置し、被告組合の疲幣のみを期待するという態度を維持して本件ピケストを容認、助長した。

3 争議封殺の責任

原告は右2の期待が実現しないと見るや、前記一1(二)記載のとおり同五四年二月二七日、一転して被告組合を暴力で解体、排除することを決定し、これを実行した。原告は、この時期、被告組合員の実家のある神奈川県、静岡県、長野県、新潟県、富山県における脅迫行為など労使関係とは全く無援の暴行、脅迫行為を全国的に展開した。

(原告)

被告の右主張は争う。

第四争点に対する判断

一本件紛争の経緯

当事者間に争いのない事実及び証拠(〈書証番号略〉、証人今泉孝造、同山上良夫、同小林明夫、同高野宇吉、同佐藤克明、同阿部国雄、同秋場清志、同能川和男、同流川孝、同野中保夫、同高山博、同遠藤忠夫、同三田義樹、被告関口、同原、同内藤、同太田、同秋山、同中村、同大薮、弁論の全趣旨)によれば、次の事実を認めることができる。

1  原告は、書籍雑誌の販売を業とする株式会社であり、被告は、その従業員で結成された法人格なき社団たる労働組合である。

原告には、労働組合として被告組合のほか、昭和五一年一二月一四日に書泉社員会の名称で結成され、その後同五二年一一月八日に改組されて同年一二月に日本出版労働組合連合会(以下「出版労連」という。)に加盟した全書泉労働組合(以下「全書泉」という。同組合にはパートタイマーは加入していなかった。)が存在した。被告組合の組合員数は同五三年四月ころで三〇名弱、全書泉の組合員数は同じころで三〇数名であり、原告の一〇〇名余りの従業員のうちその余の者は、いずれの組合にも属していなかった。

被告関口、同太田、同内藤及び同原は、いずれも前記のとおり被告組合の組合役員の地位にあった者であるが、右被告らを含む被告組合員らは、組合結成当時いずれも年齢が一〇代又は二〇代で、従前労働組合活動の経験を有していなかった。

同大薮平太は、同四七年に株式会社信山社(その後株式会社岩波ブックサービスセンターに移行)に入社して信山社労働組合の結成に関与し、同組合の書記長、委員長、副委員長を歴任した者である。同被告は、他の小売書店の労働組合の支援活動にも従事し、被告組合からの依頼に基づき同組合の結成大会に参加して以来、同組合を支援していた。

同中村優は、同四二年に株式会社有斐閣に入社して有斐閣労働組合に加入し、同組合の委員長、書記長、副委員長を歴任した者である。同被告は、右信山社労働組合の結成や春闘の際に助言をする等、他の小売書店の労働組合の支援活動もしており、被告大薮からの要請で被告組合の結成大会に参加して以来、同組合を支援していた。

同秋山勝は、同四二年に教育出版株式会社に入社して教育出版労働組合に加入し、同組合の書記長、委員長を歴任すると共に、上部団体である出版労連の中央委員会委員等をしていた者である。同被告は、被告組合の結成大会に参加して以来、同組合を支援していた。

2  被告組合は、同五一年一一月二〇日結成大会を開催し、翌二一日原告に対し組合結成を通知すると共に同年度の年末一時金の支給、パートタイマーの待遇改善等を内容とする要求書(同組合は、特に社員とパートタイマーの一時金の同率支給、同一労働条件を実現することを基本方針としていた。)を提出し、被告組合の役員及び同組合から委任を受けた被告秋山、同中村、同大薮らが出席して原告と第一回の団体交渉を行った。被告組合と原告との第二回団体交渉は同月二三日に開催されたが、同月二七日に予定されていた第三回団体交渉は、原告が団交時間、人員の制限、委任団交の拒否等を内容とする提案をし被告組合がこれを拒否したことから開催されなかった。このため、被告組合と原告との間で右団交の制限問題等をめぐり予備折衝が何度か行われたものの団体交渉は開催されないという状態が続き、被告組合は原告が団体交渉の引き延ばしにより組合潰しを意図している等と非難し団体交渉の開催を求めてしばしばピケッティングを伴う全日又は時限のストライキを行い、あるいは店舗内にステッカーを貼付する等争議状態となった。

右争議は、途中被告組合によるピケストが行われたことはあったものの、同五二年五月に団体交渉が再開、継続され、同年九月二五日に原告と被告組合との間で、争議についての原告の被告組合に対する謝罪、同五一年度年末一時金(社員3.4か月、準社員二か月、パートタイマー一か月)及び同五二年度夏季一時金(社員2.91か月、準社員二か月、パートタイマー一か月)の支給、パートタイマーの時給の引上げ(同五一年一二月から四四〇円、同五二年三月から五〇〇円とする)、賃金体系の作成等の労働条件の改善等を内容とする協定(以下「九・二五協定」という。)が締結されたことにより解決した。

その後被告組合は、同五二年一一月一四日、原告に対し同五二年度年末一時金支給(一律四か月)等の要求をし、交渉の結果、全書泉と同率で同年一二月一八日に原告と妥結調印(年末一時金は社員3.3か月、準社員2.5か月、パートタイマー2.0か月)した。

このような交渉過程で、被告組合は、書泉社員会及びこれが改組された全書泉に対し、被告組合潰しのために作られた原告の御用組合であり、労働者間の差別分断を図ろうとする原告の意を受け容れてパートタイマーの組織からの排除及び労使協調を掲げ、ステッカー剥がしやスト破りを行って被告組合と敵対している。パートタイマーの年末一時金が二か月を超えられなかったのは全書泉が低額要求をしたためだ等と非難し、原告に対しても、全書泉と結託して低額で先に妥結しその結果を被告組合に押しつけようとしている等と非難していた。

3  被告中村、同秋山、同大薮は、被告組合と原告との第一回団体交渉後も、被告組合から委任を受けて原告との団体交渉及び予備折衝に出席し、同大薮は右協定で合意された賃金体系の作成作業にも関与した。また、同被告らは、同五二年九月に結成された「書泉闘争を支援する会」に加わり、被告大薮がその代表に就任し、被告組合のため財政的支援、集会参加者の動員、署名運動等を行った(その後同会に代って同五四年六月に「書泉闘争支援共闘会議」が結成され、同大薮は副議長に就任した。)。

4  同五三年春闘に際し、全書泉は、同五三年三月一三日出版労連傘下の「一九七八年春闘小売洋販共闘会議統一要求書」を原告に提出し、社員の賃上げ(一律一万八〇〇〇円+一〇〇〇円×(N―一八)。ただし定期昇給は別、Nは年齢)、夏期一時金の支給(一律3.8か月)等の労働条件に関する一一項目の要求をし、統一交渉を重ねた結果、同年五月一〇日原告と出版労連との間でおおよそ次のような内容で妥結した。

① 社員の賃上げ

一律五〇〇円+五二三円×(N―一八)とする。別に定期昇給として平均九八六七円(9.47パーセントの増額となる)。

② 夏期一時金

社員2.91か月、準社員2.41か月、パートタイマー1.41か月(パートタイマーについては、四一パーセントの増額となる)。

さらに、全書泉は、同年三月一三日統一要求とは別にパートタイマーの時給を一〇〇円増額して六〇〇円とすることを要求し、同年六月一日時給を五四〇円(八パーセント増額)とすることで原告と妥結した。

5  被告組合は、右4の全書泉の春闘要求に先立つ同五三年三月五日に臨時大会を開いて同年春闘方針(全書泉の低額妥結構想を突破すると共に、社員とパートタイマーにつき同一の労働条件を獲得し、このことを通じて全書泉を解体し組織拡大を図る等)を採択すると共にストライキ権を確立し、翌六日に「一九七八年春期要求」を原告に提出して、同五三年度賃上げ(一律二万六〇〇〇円+一〇〇〇×(N―一八)で定期昇給は別)、パートタイマーの時給引上げ(八五〇円とする)、諸手当、退職金等に関する一七項目の要求をし団体交渉を重ね、賃上げについての原告の回答は次のとおり変遷したが妥結しなかった。

同月二七日 ―社員は一律一〇〇+五〇円×(N―一八)+定期昇給(平均)九八六七円とする。

パートタイマーは現状どおりとする。

同年四月六日 ―社員は一律五〇〇円+一〇〇円×(N―一八)+定期昇給(平均)九八六七円とする。

パートタイマーは現状どおりとする。

同月一七日 ―社員は一律五〇〇円+二八〇円×(N―一八)+定期昇給(平均)九八六七円とする。

パートタイマーは時給五二〇円(二〇円増額)

同月二六日 ―社員は一律五〇〇円+五二三円×(N―一八)+定期昇給(平均)九八六七円とする。

パートタイマーは時給五四〇円(四〇円増額)

(原告と全書泉とは、前記3①記載のとおり右回答内容で妥結した。)

次いで、被告組合は、同年五月一四日原告に対し夏期一時金(4.0か月)支給等の要求を提出したところ、原告は、同月二〇日前記3②の全書泉との妥結内容と同一内容の回答をした。

さらに被告組合は、同五三年六月ころ社員の賃上げ、パートタイマーの時給引上げ、パートタイマーの夏期一時金の三項目に要求を絞って、全書泉との原告との間の前記4の妥結内容よりも有利な回答を求めたが、原告は右妥結内容と同一の回答しか出せないとして両者に歩み寄りがみられなかった。その後、被告組合から原告に対し同年一〇月三〇日提出された年末一時金(四か月)支給等の要求につき、原告は当初社員2.03か月、パートタイマー1.42か月の回答をしたものの、その後の団体交渉において年末一時金については社員とパートタイマーと同率(3.3か月)で支給するので、右三項目については原告の回答内容で妥結してほしい旨を被告組合に要請したが、同組合がこれを拒絶したため、結局妥結には至らなかった。

この間被告組合は、原告の回答につき、①賃上げに対する回答は、労働者の生活を無視した低額回答であり、一律部分が低いため若年労働者の賃金を抑え高年齢者との格差を拡大するものであって九・二五協定で定めた賃金体系を改悪するものである。②パートタイマーに関する回答はパートタイマーに対する差別であり、一時金の支給率は九・二五協定で妥結した前年の年末一時金の支給率よりも社員とパートタイマーの格差を拡大するものであって、両者の同一労働条件をめざす方向に逆行するものである等と批判すると共に、原告が前記3の全書泉との間の妥結内容を楯にとって被告組合と妥結しないで争議を長期化させて同組合の解体を図っている、社長が組合の要求にもかかわらず団交に出席せず不誠実な団交を続けている等と原告を非難した。これに対し、原告は、定期昇給額を含めた受取り額は他社と比べ低額ではなく回答内容には妥当性がある、全書泉との関係から同組合との妥結内容以上の前進回答をすることはできない等と主張した。

原告と被告組合とは、同五三年の春闘要求の各項目等について同年三月六日から翌五四年二月二日に至るまで九〇回近くも団体交渉を重ねた。右団体交渉には、被告組合から出席の委任を受けた被告秋山が六〇数回、同中村が五〇回余り、同大薮が四〇数回それぞれ出席し、その席上で助言したり意見を述べるなどしていた。

6  被告組合は、同五三年春闘以降の右交渉を自己に有利に導くため、同年四月六日にグランデ店頭で時限ストライキをしたのを皮切りに、別表Ⅰ記載の日時にグランデ店及びブックマート店において後記のようなピケッティングを伴う全日又は時限ストライキをしばしば行ったが、原告は前記四月二六日の回答内容を変更しなかった。そこで、被告組合は、被告秋山、同中村及び同大薮も出席していた同年一一月二一日の団体交渉において、原告に対し、同月一三日付けの組合ビラで宣言していた無期限ストライキを翌二二日から実施することを通告し、同日以降は無期限の全日ストライキに突入した(なお、原告は被告組合が同年四月二三日及び同五四年二月二八日にもピケッティングを行ったと主張するが、〈書証番号略〉によれば、同五三年四月二三日にはピケッティングが行われなかったことが認められ、また後記認定によればグランデ店でのピケッティングが同五四年二月二七日に排除されたため翌二八日には同店でピケッティングが行われなかったことが認められる。)。

右ピケッティングの態様は、グランデ及びブックマートの両店舗の出入口ドア、ショウウインドゥ及び外部に面したガラスに「ストライキ決行中」、「差別・分断労務政策紛砕」等と記載したステッカーやビラを多数貼付し、あるいは被告組合名やスローガンの入った横断幕を張り、グランデ店(三か所)及びブックマート店(二か所)の各出入口の前に被告組合員及び支援労働者が各数名ずつ腕章、ゼッケン、鉢巻きを着用する等して佇立し、あるいは座り込み、ハンドマイク等を使用して顧客にストライキ中なので入店購買をしないよう呼び掛けて気勢をあげ、これに応じないで入店を試みた顧客に対しては「何やっているんだ」「馬鹿野郎」等と罵声を浴びせて入店を阻止し、強引に入店した顧客については組合員ら数名が取り囲んだうえ押し戻して書籍購入を断念させるというものであった。また、同五三年一一月二二日以降の無期限ストライキ中には、これに加えて右出入口の前で被告組合員らが車座になってトランプや将棋をしていたこともあった。

被告関口、同太田、同内藤及び同原は、被告組合役員として本件ピケストの実施を決定し、他の組合員と共同してこれを実行した。また、被告秋山、同中村及び同大薮は、本件ピケストが行われていた間、昼休みや勤務終了後などに右ピケッティングの現場に行き、ピケッティングを実施している被告組合員らに合流していた。

7  右ストライキ中も原告の両店舗においては、被告組合員以外の従業員が就労し書籍販売をする体制を整えていたが、右のような状況のため両店舗とも客が入店できるような雰囲気ではなかった。このため、原告は、右ピケストの期間中、両店舗内での書籍販売業務ができず、被告組合員以外の従業員が客の注文に応じて指定場所に届ける等の方法によるわずかな売上げがあったにとどまった。

原告は、右売上げの激減により財政状況が悪化し、同五三年の年末一時金の支給ができなかったばかりでなく、同五四年二月ころには金融機関からこのままの状態が続くならば今後原告に対する融資はできない旨告げられた。そこで原告は、被告秋山を通じ被告組合に対し前記三項目についての回答を変更してもよい旨を伝えてストライキの中止を求め、同月一七日にこの点につき予備折衝をしたが、被告組合が原告に対し謝罪文と解決金の支払を求めたことから話合いは物別れに終わった。このため原告は、ストライキ中止の目途が立たなくなって会社倒産の危機感を抱き、同月二五日ころ、かねてから原告に対しストライキの解決の手助けをすると申し出ていた橋本秀昭(同人は、同五一年ころ他の会社の労働争議の際に労働組合員に暴行を加え罰金刑に処せられた前歴を有していた。)に争議の解決を任せ、同人以下臨時従業員五〇名を雇い入れた。

右臨時従業員らは、同年二月二七日午前一一時すぎころグランデ店前に赴き、同所でストライキ中の被告組合員らに対しブックマート店で就労すべき旨の原告の分離就労命令を告げた後、被告組合員らのピケストを排除し、同店のドア、ウィンドウに貼ってあった被告組合のステッカーを剥がして同日午後二時すぎころ同店の営業を再開した。そして、同日右排除行為に対する抗議等のため同店に赴いた被告組合員に暴行をふるって負傷させ、その後も右翼暴力団追放、グランデ奪還等を叫んで同店周辺に赴いた被告組合員らに暴行を加えて傷害を負わせたり、ブックマート店でのピケラインにスクラムを組んで突入する等の行為を繰り返した。原告は、同年三月二〇日右臨時従業員のうち一〇名を正式社員として採用し、新たに発足した社長室及び労務部に配属し、橋本を労務部長、秋山義憲を社長室長として引き続きストライキ対策及び店舗での営業の確保を任せた。そして、右臨時従業員らは、同年四月一三日午前一〇時三〇分の開店と同時にブックマート店でピケストを行っていた被告組合員らを排除し、ブックマート店の営業を再開した。

右臨時従業員らは、この間被告組合員らの自宅や実家周辺において、被告組合員名と一緒に「死刑」、「センメツ」、「左翼過激派追放」等と記載したビラを貼ったり、スプレーで同様の内容をドアーや付近のガードレールに記載したり、街宣車で押しかけたり、支援労働者である被告大薮の勤務先の建物の外部ガラスに「大薮ちゃん遊ぼう」等と記載したビラを貼り付ける等の嫌がらせをした。このため、嫌がらせに耐えられず、後記8の損害賠償請求通知があったことも加わって、原告を退職する被告組合員が出た。被告組合員らは、原告を被告として身体、名誉侵害等を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求の訴えを東京地方裁判所に提起し、同裁判所は昭和五七年六月二八日右臨時従業員らの暴行やいやがらせが不法行為に該当し、これにつき原告が民法七一五条に基づき損害賠償責任を負う旨の判決をし、東京高等裁判所も同六二年一〇月二二日原告の控訴を棄却し、同判決は確定した。

8  原告は、同五四年四月末ころから五月ころにかけて、被告組合員の両親及び身元保証人に対し郵便又は電話で、被告組合の行った本件ピケストは違法な争議行為なので、これによって原告が被った損害の賠償を被告組合員及び保証人に請求することになった旨を通知した。

9  被告組合は、同五五年一一月一五日原告に対し、争議前面解決を要求すると共に、同月二六日をもって無期限ストライキを解除し同組合員が就労することを通知した。これに対し原告は、被告組合員が原告の店舗内に立ち入ることを禁止してその就労を拒絶した。そして、原告の右対応に抗議して就労を要求するため店舗に赴いた被告組合員らに対し、前記臨時従業員らが暴行を加え傷害を負わせた。原告は、その後も被告組合員らの就労を拒絶し続け、同六二年八月には被告組合員全員を解雇した。

二本案前の主張(訴権の濫用)について

被告らは、本件訴えが真に損害の填補を求めるものではなく損害賠償請求に藉口して被告組合及び同組合員らに対する不当労働行為を実現することを目的として提起されたものであるから、訴権の濫用であり訴えの利益を欠くと主張するが、以下のとおり右主張には理由がない。

1  被告らは、原告が不当労働行為を段階的に強化し、悪質さの度合いを深めていった状況下で本件訴訟が提起されたとして、昭和五三年春闘以降の原告の行為を不当労働行為であると指摘している。被告らが主張する事実のうち、原告が臨時従業員を用いて本件ピケストを排除したこと、右臨時従業員が被告組合員らに暴行を加えて傷害を負わせたり、同人らの自宅や実家周辺でいやがらせを行う等の不法行為を行ったこと、本件訴訟提起前の同五四年四、五月ころ被告組合員の親及び身元保証人に損害賠償請求の通知をしたこと、同五五年以降被告組合員の就労要求を拒否し同六二年八月に被告組合員全員を解雇したことは前記認定のとおりであり、右のような諸事情から、原告が本件訴訟提起当時、被告組合に対し嫌悪感を抱いていたことを認めることができそうである。しかしながら、それが認められるとしても、本件損害賠償請求が後記のとおり原告の正当な権利行使の面を具備していることを考慮すると、そのことから直ちに本件訴訟の提起が不当労働行為になるとまで解することはできず、他にそう解すべき事情は本件において認めることができない。

2  次に被告らは、原告には損害填補の意思がないのに、被告組合を消滅させようとの動機に基づき過大な請求をしていると主張するが、原告に現実に損害填補を実現しようとする意思があるかどうかはともかく、本件ピケストが被告らの損害賠償責任を発生させるものであるかどうかを訴訟上確定しておくことは、原告にとって意義のあることであるから、本件訴訟の提起自体を不当とすることはできない。

3  さらに被告らは、本訴請求の訴訟物が不特定で、請求原因が抽象的であることを論難しているが、後記説示のとおり、この点についての被告の主張は採用できず、原告の請求は法律上の根拠があるということができる。

以上のとおりであるから、本件訴えの提起が被告組合の弱体化を図った不当労働行為で、訴権の濫用であるとまでは認めることができない。したがって、被告らの本案前の主張は失当である。

三本件ピケストの違法性について

前記認定事実によれば、本件ピケストは、原告の全従業員の三割にも満たない構成員しか有しない被告組合が、他の多数の従業員が店内で就労し顧客に対する書籍販売の体制を整えていたのに対し、右販売を阻止して原告に損失を与えることにより交渉を有利に進めようとの意図のもとに、店内に入ろうとする顧客を対象として行われたものであるところ、その態様は、顧客に対する不買の呼びかけやビラの配付に止まらず、両店舗の出入口ドアやショウウィンドウ等にスローガン等を記載した横断幕、ステッカー、ビラを張りめぐらし、ときには出入口前に組合員が座り込んで将棋やトランプに興じる等、およそ顧客が自由に出入りして購入したい本を探せるような雰囲気ではない状況を作出したうえ、被告組合員らの説得に応ぜず敢えて店内に入ろうとする顧客に対しては、罵声を浴びせたり取り囲んで押し戻す等実力をもって入店を阻止するというものであり、これらの事情を総合すると、本件ピケストは平和的説得の範囲を超えたものであって違法であると言わざるを得ない。

被告らは、本件ピケストが目的、手続、態様においていずれも正当であると主張するが、本件ピケストがその態様において正当と認められないことは右に説示したとおりであり、本件ピケストの目的、手続が仮に正当なものであったとしても、そのことは右違法の判断を左右しないというべきであるから、右主張は採用することができない。

四被告らの責任

1 被告組合及び同組合員の責任

前記認定事実によれば、被告組合員である被告関口、同太田、同内藤及び同原は、いずれも被告組合役員として右違法な本件ピケストの実施を決定し、他の組合員と共同してこれを実行した者であるから、原告に対し、共同不法行為(民法七一九条一項)に基づき本件ピケストにより原告が被った損害を賠償すべき責任がある。そして、本件ピケスト当時右被告四名はいずれも被告組合の役員であったから、権利能力なき社団である被告組合は、民法四四条一項の類推適用により、本件ピケスト実施についての不法行為責任を負う。

被告らは、争議行為は計画的に組織化された集団的団体行動であるという点に意味があるから、一個の団体行動としての争議行為のみが法的評価の対象となり、個々の組合員の行為は法的評価の対象とならず、被告組合員個人につき不法行為責任は成立しないと主張する。しかしながら、争議行為が集団的団体行動の性質を有していることは事実であるとしても、そのことが直ちに個々の組合員の行為が法的評価の対象外になるとの結論には結びつかず、むしろ被告組合員の行動は一面社団である被告組合の行為であると同時に、組合員個人の行為である側面を有すると解されるから、組合員個人についても前記のとおり不法行為責任が成立するものというべきである。また、被告らは、本件ピケストへの右被告四名の関与の態様について原告の主張、立証がないとも主張するが、同被告らが原告主張のとおり本件ピケストの実施の決定に関与し、ピケッティングに参加し、その態様が本件ピケストの期間を通じて変化がなかったことは前記認定のとおりであるから、個々の日時における各被告の行為態様まで具体的に明らかにしなくとも、右事実から同人らにつき共同不法行為(民法七一九条前段)に基づく責任が成立するというべきである。したがって、被告らの右主張は失当である。

2 支援労働者である被告三名の責任

被告は、当該企業の労使関係上の責任問題を第三者の支援労働者に転嫁することは、法律上およそ不可能であると主張するが、支援労働者であっても当該違法な争議行為への加功の程度、態様いかんによっては、共同不法行為者としての責任を負うべき場合があるのは当然である。これを本件についてみるに、前記認定事実によれば、被告組合員らは組合結成当時いずれも年齢が三〇歳未満で従前労働運動の経験を有しておらず、本件ピケスト当時九・二五協定に至る争議を経ていたとはいえ組合活動には不慣れであったのに対し、被告秋山、同中村及び同大薮はいずれも小売書店の労働組合の役員を歴任した労働運動の経験が豊富な者であり、被告組合の要請により同組合の結成大会及び結成通知に立ち会い、被告組合の委任を受けて本件ピケストの間に行われた団体交渉に多数回出席して被告組合に助言をし、昼休みや勤務時間後にはピケッティングに合流していたものである。これらの事情を総合すると、被告秋山、同中村及び同大薮は、被告組合に対し本件ピケストの実施につき助言、指導を与えていたことを推認することができ、しかも右ピケストにも一部参加していたということができるから、右被告三名は本件ピケスト実施について共同不法行為者(民法七一九条)としての責任を負うべきであると解するのが相当である。

五損害

1  損害額

前記一で認定した本件ピケストの態様に照らせば、原告の売上が本件ピケストにより減少し、原告が損害を被ったことは容易に認められるところであるから、原告が本訴において請求している昭和五三年一一月から同五四年二月までの期間における損害の額について検討する。

(一) 原告の昭和五三年一月から翌五四年三月までの各月毎の売上高の推移は次のとおりである(〈書証番号略〉)。

昭和五三年一月 ―二億三五八六万九〇〇〇円

同年二月 ―一億九七〇四万八〇〇〇円

同年三月 ―二億三一一四万三〇〇〇円

同年四月 ―二億一三七五万二〇〇〇円

同年五月 ―二億一一五二万一〇〇〇円

同年六月 ―一億四七二八万六〇〇〇円

同年七月 ―一億八九八〇万二〇〇〇円

同年八月 ―一億六七二一万四〇〇〇円

同年九月 ―一億七〇〇六万六〇〇〇円

同年一〇月 ―一億〇三五三万九〇〇〇円

同年一一月 ―六七四二万七〇〇〇円

同年一二月 ―四一六万円

同五四年一月 ―三九七万円

同年二月 ―五三六万八〇〇〇円

同年三月 ―一億一二五〇万二〇〇〇円

(二) 原告の昭和五〇年度から同五四年度までの各事業年度毎の売上高の推移は次のとおりである(〈書証番号略〉)。

昭和五〇年度(同五〇年九月一日から翌五一年八月三一日まで)

―二七億四九〇五万九一九五円

昭和五一年度(同五一年九月一日から翌五二年八月三一日まで)

―二六億五三〇六万四三六〇円

昭和五二年度(同五二年九月一日から翌五三年八月三一日まで)

―二四億三二三六万一三七七円

昭和五三年度(同五三年九月一日から翌五四年八月三一日まで)

―一四億〇一五八万八七九九円

昭和五四年度(同五四年九月一日から翌五五年八月三一日まで)

―二五億八九七八万六八四六円

(三) 前記一で認定したところをもとに、グランデ店及びブックマート店において行われた本件ピケストの延べ時間数を、昭和五三年四月から同五四年三月まで各月別に算出すると、次のとおりとなる。

昭和五三年四月 ―九七時間

同年五月 ―七一時間

同年六月 ―一一〇時間

同年七月 ―八四時間

同年八月 ―四二時間

同年九月 ―八四時間

同年一〇月 ―二一五時間三〇分

同年一一月 ―二七三時間

同年一二月 ―四二八時間

同五四年一月 四一一時間

同年二月 ―三八〇時間

同年三月 ―二二〇時間四〇分

右認定事実によれば、原告がその間の損害の賠償を請求している昭和五三年一一月から同五四年二月までの期間を含む同五三年度の売上は、同五〇年度から同五四年度までの五年間において最低額であり、同年度を除く前後の年度で最も売上高の少なかった同五二年度の売上高と比較しても、同五三年度の売上高は一〇億三〇七七万二五七八円少なくなっている。右売上減少分がすべて昭和五三年一一月から同五四年二月までの本件ピケストの影響であることを認めるに足りる証拠はないが、右四か月の間も同年度の他の月の平均売上高と同一の売上があったと仮定してみると、同年度の売上は、およそ一九億八〇九九万円程度(右四か月の売上高の合計八〇九二万円を同年度の売上高一四億〇一五八万円から控除し、その差額一三億二〇六六万円を八月で除し一二月を乗じて得た額)となり、同年度の売上減中五億七九四一万円(一九億八〇九九万円と一四億〇一五八万円との差額)程度は、右四か月の売上減がその原因となっているものといえる。そして、証拠(〈書証番号略〉、証人滝川勗)によれば、原告の利益率は少なくとも21.5パーセント程度であることが認められるから、右の売上減にこの利益率を乗じると約一億二四五七万円となり、原告主張の期間中本件ピケストにより右同額程度の利益の減少があったという見方ができる。

また、昭和五三年四月から同五四年三月までの一年間で比較してみても、同様の利益の減少があったということができる。すなわち、ピケストの延べ時間が本件損害賠償請求の期間である四か月の各月より大幅に少ない昭和五三年四月から九月までのうち、ピケストの延べ時間が最も少ないにもかかわらず売上高が同年六月に次いで少なく、ピケストがなかった場合には売上高が最も少なかったと推定される同年八月の売上高と、原告主張の四か月間の各月の売上高との差額をとってみると、その合計は五億八七九三万一〇〇〇円となり、原告主張の期間中にピケストのために右同額程度の売上の減少があったものと考えられる。これに前記の利益率21.5パーセントを乗じると同期間の利益減少分は約一億二六四〇万円となる。

右に述べたところによれば、原告の昭和五三年一一月から同五四年二月までの本件ピケストによる損害は、その請求する九七七一万一〇〇〇円(原告主張の期間中の赤字額の合計額)を下らないと認めることができる。

もっとも、被告組合の本件ピケストにより、原告は同組合員に対する賃金の支払を免れているから(証人山上良夫)、損害の査定に当たってはこれを控除し得ることになる。本件ピケストに参加した被告組合員の賃金月額の総額がいくらかは本件証拠上明らかではないが、被告の自認するところによると、本件ピケスト直前ころの被告組合員の平均月額賃金は社員が一四万七〇〇〇円、パートタイマーが六万四〇〇〇円であり、組合員数は社員とパートタイマーを合わせて三〇名弱であるから、被告組合員の月額賃金の総額は四五〇万円(一五万円×三〇名)を超えることはなく、四か月間で一八〇〇万円に達しない。そうすると、この賃金を控除する場合であっても、原告の損害は請求額を超えるものと認められる(店舗での販売に要する包装紙等の経費の支出を免れていることも考えられるが、その金額はそれ程多額であるとは認められず、これも控除できると仮定しても原告の損害額は請求額を超えるものと推定して妨げない。)。

なお、被告らは、原告の赤字額中人件費その他の販売費及び一般管理費は損害から除くべきである旨主張するが、原告の損害が右のようなものである以上、その主張を採用することができないことは明らかである。

2  過失相殺の主張について

被告らは、原告が被告組合結成以来同組合を敵視する労務政策をとっていたため本件争議を誘発したもので、損害の発生につき原告に過失がある旨主張するが、前記認定事実によれば、原告は被告組合結成後争議状態を経たものの昭和五二年九月二五日に被告組合に対する謝罪を含む九・二五協定を締結し、同年一二月一八日には年末一時金等につき被告組合と妥結しているのであるから、同五三年春闘以前の段階においては原告と被告組合との労使関係は一応正常化していたものといえ、原告が被告組合を敵視し、その団結権の侵害を意図していたとまでいうことはできない。

次に、同五三年春闘以降本件ピケストに至るまでの間、原告が全書泉との妥結内容による妥結を強要するなどして不誠実な団体交渉に終始し、争議の長期化による被告組合の消耗を意図し、本件争議を誘発し、拡大したといえるかどうかにつき判断する。確かに、前記認定のように原告は賃上げ等につき全書泉と先に交渉妥結し、被告組合に対しては全書泉との妥結内容と同一の回答しか出せないとして歩み寄らず、パートタイマーの労働条件についても、パートタイマーを組織化していない全書泉との妥結内容による妥結を主張していたものであり、これらの事実は被告らの指摘に沿うものといえなくもない。しかしながら、前記認定のとおり、原告の二つの組合は組合員数等その組織規模においては全書泉の方がやや勝っており、賃上げ等に関する全書泉と原告との妥結内容も団体交渉の結果得られたものである。そして、原告が被告組合に最終回答として妥結を求めた内容は、社員の賃上げについては別表Ⅱのとおりであって、定期昇給を含む賃上げ後の賃金総額は、同業他社の従業員の賃金に比べて低額とはいえず、むしろ多い方であるといえること、パートタイマーの時給(五四〇円)についても同業他社の水準と比べて多いこと(三省堂書店四七〇円、弘栄堂書店四八〇円、教文館五三〇円等)が認められる(〈書証番号略〉)。これらの事実からみると、原告が被告組合に対し、全書泉との妥結内容による妥結を求めてこれを譲ろうとしなかったとしても、そのことから原告がことさらに被告組合との間で不誠実な団体交渉を行い、争議の長期化を図っていたものということはできず、争議の誘発ないし拡大につき原告にその責任を問うことはできないというべきである。この点については、団体交渉における原告の説明に資料の開示等の点で不十分な点があり、社長が団体交渉に出席しなかったとしても、変わるものではない。

さらに、被告らは、グランデ店での本件ピケストが排除された以降の原告の臨時従業員による暴行、脅迫行為等の諸事情を過失相殺の適用上斟酌すべきであるとも主張するが、これらの諸事情と本件ピケストによる損害の発生、拡大との間に因果関係を認めることはできない。

したがって、被告らの右過失相殺の主張は採用することができない。

第五結論

以上によれば、原告の本訴請求はいずれも理由があるからこれを認容し、仮執行の宣言については相当でないものと認めてこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官相良朋紀 裁判官長谷川誠 裁判官阿部正幸)

別表Ⅰ、Ⅱ〈省略〉

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